2012年4月8日日曜日

現役関係者コラム | オリジナルインタビュー | 田重田静男厩務員



中間にひと頓挫があったものの、秋初戦のオールカマーを快勝して挑んだ天皇賞(秋)。ただでさえ、不得意としていた東京コースに、絶対的不利な条件と言われる18番枠からの発走。更には、超ハイペースの煽りを受けるように14着に終わってしまった。宝塚記念で降したブエナビスタが復活、三冠馬・オルフェーヴルの参戦と、今年最高のメンバーが集結するグランプリ。逆襲を目論むアーネストリーの近況について、天皇賞に引き続き、田重田厩務員が語ってくれた。

−:天皇賞(秋)は期待していたんですが残念な結果になりました。

田:枠番が決まった時点で、いくらか覚悟はしていたんだけどね(笑)。この世界にいると"府中の2000mの大外枠は厳しい"って話は何度も聞いたことがあったからね。だけれど、実際、天皇賞のスタート前にゲートに行ったらびっくりしてしまったよ。「これはいくらなんでも遠すぎる!」ってね(笑)。アーネストリーは枠に入ってから前掻きをするんだけど、最後に入って前掻きしている間にゲートが開いたものだから、少し出負けしてしまったんです。出負けした分、押して行ったら今度は掛ってしまって。とにかく18番枠からじゃ欲しいポジションなんて取れないしアーネストリーのレースも出来ない。それを嫌というほど思い知らされたレースだったね。

−:しかも、もの凄いハイペースになってしまいました。

田:「なんでああなるのかな?」っていうくらい速かったもんね。終始、エイシンフラッシュに突かれたものだから、アーネストリーが怒ってしまってリラックスして走れなかったのも敗因の一つですね。馬が怒ってしまうといつもの走りが出来なくなる。アーネストリーの場合は手前を変えずに走ってしまったんだから大敗したのも当然の結果だよね。

−:手前を変えずに走ってしまったんですか。ずっと左手前だけで走ったということですか。

田:そう、普通は左回りならコーナーを左手前で走って、直線では右手前に替えるよね。それが出来なかった、ということです。着順が悪いのもうなずけるでしょう。


ときにトリプルクラウンでした

−:"大外枠・超ハイペース・手前も替えなかった、"と敗因はいくつもありますね。宝塚記念を勝った時と比べて、直前の動きはどうでしたか。

田:宝塚記念のデキをベストと考えても、それに近い状態だった思っているけどね。天皇賞前の追い切りではブレずに坂を駆け上がってきたし、それがアーネストリーが好調だってサインだから自信もあったんだけどね。

−:少し気になったのが体重というか体型なんです。元々アーネストリーはお腹がボテッと見える体型なのに、天皇賞の一週前に見た時は腹周りがスッキリして仕上がり過ぎに見えたんです。

田:たしかにそこは気になっていたんですよ。オールカマーで522キロ、前走時と比較してマイナス12キロだったのが誤算でした。「輸送があったにせよ減り過ぎたな」と思っていました。そこから食わし込んで調教を強めたことで、天皇賞の一週前の動きが良くなっていたんです。今になって思うのは一週前が良すぎたということ。あそこから馬にスイッチが入ってしまって、若干出来過ぎた状態だったのかもしれません。調教で乗っている山田君も一週前の時点で「スイッチが入るのが早過ぎる」と心配していましたからね。アーネストリーを良く見ている人は同じように感じたんじゃないですか?

−:細く見えた一週前の体が天皇賞当日には530キロでした。オールカマーで12キロ減った分を8キロ戻して数字上はベストに近かったけど、何かが違う感じもありました。

田:太い状態から調教を強めて仕上げるのと、細くなった体を食わしながら仕上げるのとでは違うんですよ。レース当日の体重が同じ530キロでも、550キロある状態から仕上げた530キロの方が馬にとっては良いんですよ。そういう意味で天皇賞一週前の状態を維持して出したかったけど、少し早目にピークが来てしまったのかもしれない。パドックでもキョロキョロして集中力が散漫だったからね。

−:仕上げ過ぎるのも馬には良くないということでしょうか。

田:この間、もう一頭の担当馬ダノンスパシーバで鳴尾記念に挑戦したんです。凄くいい状態で送り出せたんです。「自信満々!」絶好調で臨んだ結果はどうでした?


画像APAスタイルを引用する方法

−:ワールドスーパージョッキーズシリーズで優勝したムルタ騎手が乗って、引っ掛かって終わっていましたね(笑)。

田:もうスタートして10mくらいで「ダメだ!」と思ったね(笑)。馬が具合良すぎて行く気になり過ぎていた。だから掛っちゃうんだろうね。ギリギリまで仕上げるのも難しいものだけど、少し余裕がある方が馬にとっては走りやすいのかもしれない。鳴尾記念ではそれを思い知らされたよ。

−:走る気持ちだけを求めるならギリギリまで仕上げた方がいい。しかし、走る気持ちが強すぎると折り合いを欠いてしまい、騎手が乗りづらくなるんですね。

田:8割くらいでいいのかもしれないね(笑)。残りの2割は馬にお任せするくらいの余裕が必要なんです!今回のアーネストリーも今日の一週前の追い切りではブレていたし、正直重く感じました。でも、まだ日曜、水曜と2本乗れるでしょう?そこで早目にスイッチを入れないように考えて仕上げたら、有馬当日にはちょうどいい状態になるかもしれませんよ。輸送で減る計算もしなくちゃいけないし。

−:少し重く感じたということですが、一週前の馬体重を教えてください。来週の調教後馬体重と照らし合わせるとファンがイメージしやすいと思います。

田:正確な数字じゃないよ?鞍を付けて計って556キロだった。馬装して550キロくらいが理想だったんだけど、6キロくらい太い計算になるね。汗をかきにくい時期だから数字だけにとらわれるのも良くないけど、一つの目安として体重を気にしながら馬と接しているんだよ。それと同時に、体型を自分の目で確認しながら、飼い葉や運動量を調節しているんです。

−:ということは前回の天皇賞よりも重目に作ってから絞り込む点が違うわけですね。

田:そうなるね。宝塚や天皇賞の頃とは気温が違う。この寒さが絞れない原因なんだけど、今の体を見てどう思った?体重を知らなきゃ太くは見えなかったでしょう。立ち写真の撮影は一週前。そこから2本追えるし輸送もあるから、有馬当日は534キロくらいまで絞れる余地を残した体でしょう?前回は立ち写真の体で出走してもいいくらい仕上がっていたからね。


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−:天皇賞後のアーネストリーの精神面はどうですか。超ハイペースを追走して大敗したショックがないのか気になります。

田:天皇賞の後、すぐにあのレースを忘れさす意味で鳥取の大山にリフレッシュしに行ったんです。こっちに戻ったのが11月29日だから3週間休んだことになる。その間、ジョッキー(佐藤哲三騎手)が一回乗りに行って状態を確認してくれました。大山でも17−17くらいの普通キャンター程度は乗っていたから、トレセンに帰ってすぐ、12月4日には坂路に入れて55秒くらいの時計を出せたんですよ。

−:有馬では展開が気になるんですが、アーネストリーはどんな競馬をすると思いますか。

田:おそらく5〜6番手から行くんじゃないですか?宝塚よりも少し距離が長いから、前半は抑え目に行くイメージだと思うんだけど。というのも、オールカマーを勝った後、「これは有馬を想定した競馬やね?」って哲ちゃんに聞いたら「そうですよ」って(笑)。あのイメージですよ。

−:田重田さんの話を聞くと、アーネストリーから馬券を買いたくなってきました。

田:そりゃ買うべきでしょう(笑)!大敗後だから人気も落ちるだろうね。

−:豪華メンバーの揃う有馬記念ですがブエナビスタは今回が引退レースになります。

田:もう一回、ブエナを負かしてみたいね。トレセンで見るブエナはGTを勝つような馬には見えないんですよ。どこにでもいるような体で、特別凄いオーラがあるわけでもない。でもね、パドックで見るブエナはいつもと違うね。そのくらいレースに集中できる精神的な強さがある女の子だよ。だからこそ負かしてみたい。

−:アーネストリーを応援するファンに田重田さんの意気込みを聞かせてください。


田:レースに関しては哲ちゃんにお任せするので、僕の仕事はベストの体に持っていくこと!右回りに変わるのもプラスだし中山との相性もいい。アーネストリーは獣医さんも認めるほど、心拍数の戻りが早いんです。だからレースの前半で脚を使っても、すぐに回復する心肺機能の強さがある。その強みを生かすだけの体に仕上げるのが僕の仕事なので期待してくださいよ!

−:大ベテランの田重田さんが思い出に残る有馬記念があれば教えてください。

田:1年ぶりのレースで勝ったトウカイテイオーの有馬だね。あのレースは凄かった。馬をやっている人間として感動したよ。テイオーの持つ、強い気持ちが伝わってきたレースだった。

−:今日は大一番を控えた忙しい時間を割いてくださってありがとうございました。

田:いつも応援してもらってるから取材受けないとしょうがないでしょう(笑)。いろいろ話したけど、どこまでやっても馬の本当のところはわからない。だから日々、努力しかない。アーネストリーの持っている闘志を引き出せるように頑張りますよ!少しでも良い方向に持って行くのが僕の仕事だからね。


【田重田 静男】Shizuo Tajyuta

1955年1月10日生まれ。
久保厩舎からこの世界に入る。S47年の京都牝馬特別など10勝したセブンアロー等をこれまでに担当してきた。現在はオープン馬のダノンスパシーバも担当。 息子は池江泰寿厩舎の田重田調教助手。



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